本稿ではヒョウモントカゲモドキの種類や遺伝的な情報の記載方法について整理しています。
本稿の表記規則例は、ヒョウモントカゲモドキ以外の種についても大枠は準じる事が出来ると思われます。
全てのヒョウモントカゲモドキの表記は以下に分類する事ができます。
- WCB(Wild Caught Bloodline Line)
- モルフ(Morhp)
- コンボモルフ(Combo Morph)
- 品種(Breed)
- 系統(Strain)
- ライン(Line)
-
サブライン(Subline) -
プロジェクト(Project)
- ペットクォリティ(Pet Quality)
- ノーマル(Normal)
上記のペットクォリティ以外の表記には更に「ヘテロ検証済み」又は「ヘテロ未検証」と記載する事が出来ます。
ヘテロの検証については、最後の章で取り扱っています。
サブラインとプロジェクトに関しては本表記規則では一旦使用しない事にしています。
この理由については6. サブラインと7. プロジェクトを参照して下さい。
謝辞
本稿公開前にレビューをして頂いた皆様、いつもありがとうございます。
本稿の目的
表記法を整理する目的は以下になります。
- ある(対立|複対立)遺伝子や表現型に対して、モルフや品種など意味の異なる言葉が使われているのが紛らわしいので整理したい
- 他者の商品名・ライン名をみだりに使用しない
- 品種、ライン、プロジェクトそれぞれの名前の使用方法を明確にする
- 品種(例えばタンジェリン)の中でも更に区別出来るような特徴があるが、未だ遺伝的に固定化されていない繁殖集団を指して系統(ライン)と誤使用する事を防ぐ
- 遺伝的に固定化されていない遺伝集団は品種名を使用する
- 個体の優れた特徴を遺伝的に固定化する為の集団はプロジェクトと表記する
これらを目的とするのは今現在この様なまとまった情報が少ない為に、育種家に悪意が無くても意図せずして購入者を勘違いさせてしまう事を防ぐ為です。
注意点
以下の注意事項をよく読み、本稿の表記規則に沿ってないからといって他の方を攻撃しないで下さい。
筆者はヒョウモントカゲモドキを趣味・生業にする方々の中において、本稿の内容を強制するような立場にありません。
本稿は既存の表記規則に加えて筆者が育種学、畜産学、遺伝学、保全遺伝学、動物分類学の書籍を基に独自に分類・定義・再定義した事が含まれます。
但し筆者はヒョウモントカゲモドキを趣味・生業にする方々の中において、本稿の内容を強制するような立場にありません。
また爬虫類の専門書、専門雑誌と比較すると本稿を読んで頂ける方は非常に少数となります。
よって本稿の内容をもって、他の方々を不快にするような行為はお辞めください。
特にショップの方々に、本稿の表記規則と違うなどクレームを入れる事は絶対にお辞め下さい。
ショップの方々は入荷時の表記を変える様な事は基本的に出来ません。
あくまでも1つの参考例と考えて頂き、全てではなくても賛同して頂ける部分を取り入れて頂けたら幸いです。
1. ワイルドコートブラッドライン(Wild Caught Bloodline/WCB)
ワイルドコートブラッドライン(Wild Caught Bloodline/WCB)とは採集された野生のヒョウモントカゲモドキの純粋な子孫(血統)を指します。
日本語では野生採集血統となります。
WC(Wild Caught)は野生採集個体そのものですが、野生採集個体同士を繁殖させたF1以降がWild Caught Bloodline(以下WCB)となります。
より詳細な情報はワイルドコートブラッドラインを参照してください。
1.1 WCBの表記
基亜種名、亜種名が表記となります。
- マキュラリウス/E. m. macularius
- モンタヌス/E. m. montanus
- ファスキオラータス/E. m. fasciolatus
- アフガン,アフガニスク/E. m. afghanicus
- スミシィ/E. m. smithi
兄妹交配の世代数を記載する場合は括弧の中にF、その後に世代数をつけて表示します。
参考: マウス系統の学術命名規約 « -実験動物開発室- (RIKEN BRC) http://mus.brc.riken.jp/ja/manual/nomen_strain
WCBの表記例は以下になります。
例1.
WCB: E. m. montanus(F1)
例2.WCB: モンタヌス
例3.WCB: ユーブレファリス・マキュラリウス・モンタヌス(F2)
2. モルフ(Morph)
モルフ(Morph)とは何なのかについては、モルフの定義を参照してください。
トレンパーアルビノなど、それぞれのアリル(対立遺伝子、複対立遺伝子)そのものやそれによる表現型を指します。
いわゆるポリジェネにあたるタンジェリン等は含まれません。
2.1 モルフの表記
表記は単純にそのモルフ名を記載すれば問題ありません。
例1.
Morph: Eclipse
例2.モルフ: エクリプス
2.2. ヘテロ表記
有名な遺伝パターンには潜性(劣性)、顕性(優性)、不完全顕性(不完全優性)があります(共顕性/共優性を載せていない理由は優性の法則と拡張のまとめを参照してください)。
顕性、不完全顕性はヘテロ接合体でも表現型が確認出来ますが、潜性の場合はホモ接合体でないと確認することが出来ません。
そのため潜性の場合のみhet Eclipseのように記載します。
顕性の場合はヘテロ接合体なのかホモ接合体なのか、確定する方法が難しいという理由からhet/homoを記載しません。
実際には子孫に100%遺伝するか調べる事で顕性でもヘテロかホモかわかる筈ですが、あくまでも確率でしかないので顕性のホモ接合表記はしなくても問題ない、しない方が良いと考えられます。
例1.
Morph: Normal het eclipse
例2.モルフ: ノーマルhetエクリプス
2.2.1 コンボモルフ名のヘテロ表記
ヘテロ表記には一つ一つのモルフを書く場合と、コンボモルフ名を書く場合があります。
例えばhet RAPTORという表記も実際に多く見られます。
これは小さく、限られた文字数しか書けないラベルに記載するために文字数を少なくする用途では有用と言えます(ラベルに書ききれないから書かない、というよりは有益である)。
その他にもRAPTORと記載する事で「トレンパー氏の所有するハイポタンジェリンの血統が含まれている」などの意味を含める意図があります。
ラベルが小さいので多くの情報を全て細かく記載するのは無理ですが、「hetラプター」と書けば多くの情報が含まれます。
(現在流通している全てのラプターが初期のこのタンジェリンの血を引いているとは思えませんが...)
現在トレンパー氏の解説本では、エクリプストレンパーアルビノをa.k.a RAPOTRとして扱っているそうです(注: 筆者は解説本を確認していません)。
例1.
Morph: Tremper Albino het RAPTOR
例2.モルフ: トレンパーアルビノhetラプター
ですが、トレンパー氏は他者がRAPTORという表記を使う事に対して批判的だった様なので、RAPTORなども分解して表記するのはより良い方法かもしれません。
2.3. poss表記
ヘテロ表記には、頭にposs 50%のような表記が加えられる場合があります。
これはpossessiveの略で、例えばposs 50% het eclipseだと50%の確率でeclipseがヘテロ接合しているという意味になります。
参考: poss.の意味・使い方・読み方 | Weblio英和辞書 https://ejje.weblio.jp/content/poss.
なぜ具体的に50%と書けるのか?というと、潜性や顕性などは子に遺伝する確率が計算できるからです。
遺伝の計算はヒョウモントカゲモドキのモルフ計算機で行う事が出来ます。
また計算方法については繁殖によるヒョウモントカゲモドキの遺伝を理解するための遺伝学の初歩を参照してください。
例1.
Morph: Tremper Albino poss 50% het eclipse
例2.モルフ: トレンパーアルビノ poss 50% het エクリプス
他にはMack Snowの様に不完全顕性と分類されながらも、他のモルフの影響等で子のホモ接合体を確認しないと見た目だけでは判断するのが難しいモルフが存在します。
明らかに見て解るほど強い表現型の場合は別ですが、表現型が悩ましい場合にもhetなしのposs表記を使うことができます。
親の遺伝情報が解る場合は%
も表記すると良い場合があります。
例1.
Morph: Tremper Albino poss 50% Mack Snow
例2.モルフ: トレンパーアルビノ poss 50% マックスノー
例3.Morph: Tremper Albino poss Mack Snow
例4.モルフ: トレンパーアルビノ poss マックスノー
またある種親が、例えばRAPTOR由来の場合にヘテロ検証をしていない場合は子孫に以下のようなposs表記をする場合があります。
例1.
モルフ: Tangerine Tremper Albino small poss RAPTOR
2.4 スーパー体表記
スーパー体(Super form)という表記は遺伝学には存在しない、爬虫類界隈の俗語になります。
(あくまでも)学問上問題ない表記にするのならば、例えばマックスノー/スーパーマックスノーではなくヘテロ接合体マックスノー/ホモ接合体マックスノーと記載すべきと思われます。
しかしそこまでやる意味があるのか?と言われると、メリットよりも混乱を招くデメリットの方が多いと考えられます。
よってスーパー体表記は現状のままが良さそうです。
例1.
Morph: Super Mack Snow
例2.モルフ: スーパーマックスノー
2.4.1 スーパー体について
但し、いわゆるスーパー体は共顕性(共優性)ではなく不完全顕性であり、スーパーという言葉から連想してしまいがちな凄い表現、特別な遺伝子と勘違いしない方が良いと思われます。
数多くある遺伝子の中で特別な凄い(スーパーな)表現という事ではなく、単なるホモ接合体の1つの表現というだけです。
とはいえ不完全顕性は潜性や顕性と比べて価値のない遺伝パターンという訳ではありません。
潜性と違いヘテロでも表現型が確認出来る事、ホモだとヘテロより顕著な表現型が確認出来るというメリットがあります。
潜性はヘテロの場合見た目では判別できない為に、隠れヘテロという意図しない遺伝子の混入が有りえます。
ですが不完全顕性ははヘテロでも見分ける事が可能な場合があるために重宝されます(基本的に確認できますが、マックスノーなどはコンボモルフによっては見た目では判別しにくい場合があります)。
またセイブシシバナヘビのアナコンダというモルフは、のようなホモだと完全なパターンレスになり、ヘテロだと模様が減少(不完全なパターンレス)します。
筆者はヘテロ表現も非常に好みですので、1つのモルフで2つの表現型を楽しめるというお得さもあるかもしれません(モルフや個人の好みに依ります)。
こちらに付いて詳しくはスーパー体や優性の法則と拡張のまとめを参照してください。
3. コンボモルフ/Combo Morph
複数のモルフの組み合わせによって、より特徴的な表現型になる場合にコンボモルフ(Combo Morph)名が特別に付けられる場合があります。
しかしその名称は商品名の場合が多々有り、本来の作出者以外が使用する事は不適切な場合があります。
よって幾つかの、あまりにも有名になってしまったコンボモルフ名(例えばラプター)を除き、構成モルフ名を並べるのが適切と考えられます。
RAPTORの作出者であるロン・トレンパー氏は自分以外の人間がRAPTORの名称を使う事を批判していたとの話もありますので、より厳密にしたい場合はRAPTORなども使用しない事を考慮しても良いかもしれません。
この事の詳細はコンボモルフ名と商品名を参照してください。
ここまではあくまで理想論なのですが、他の方々が魅力的なコンボモルフ名を使っているのに一人だけ構成モルフ名を並べただけの表記にするのは非常に勇気のいる行為だと思います。
正直な所、コンボモルフ名というのは多くの愛好家の収集癖を刺激し、売上にも多大なる影響を与えている要素の一つだと考えられます。
全く売上に影響を与えないのであれば、様々な種でこれほどまでにコンボモルフ名が普及する事は無かったでしょう。
また、「ブリーダーなのにコンボモルフ名も知らないのか」と誹謗中傷を受ける可能性すらあります。
3.1 コンボモルフの表記
これらデメリットを無視して「正しいのだから」というだけで、多くの方にコンボモルフ名の使用を辞めるように強制するのはあまりにも非現実的と考えます。
ここでいう非現実的とは主張する事ではなく、主張が受け入れられる事に対してです。
であればまずは、a.k.a(also known as/別名)としてコンボモルフ名を表記する事を考えるのは良い手かもしれません。
例1.
Morph: Enigma RAPTOR
例2.Morph: Enigma RAPTOR(a.k.a Nova)
例3.モルフ: エニグマラプター(a.k.a ノヴァ)
但しあくまでも「他人の商品名を使わない」というのが意図になりますので、コンボモルフ名が商品名ではない事等を確認された場合は問題ないといえます。
あくまでも「意図せず他者の商品名を使わない」為のリスク回避になります。
4. 品種/breed
品種(form, breed, race)の定義は以下のようになります。
同じ種に属する家畜から出発して、形態、生理、能力などの点で他と区別しうるような特徴を持った遺伝集団
新家畜育種学 P.15
遺伝集団とは確実にその遺伝が次世代に受け継がれる事を指します。
ヒョウモントカゲモドキの場合においては、主に体色に関する品種があります。
体格については依然として不確かな為に品種には含めませんでした。
また敢えて品種と表記し、モルフに含めていない事についてはモルフの定義を参照してください。
ヒョウモントカゲモドキの品種であるハイイエローやタンジェリンですが、1シーズン中に生まれる兄妹の中で(特に成長途中は)かなり表現にバラツキがあるため、何を持ってその品種とするのか?は非常に難しい問題かもしれません。
タンジェリン X タンジェリンの組み合わせで、ノーマルにしか思えない子が生まれる場合などがあるからです。
4.1. 累代表記について
F1のようなどれだけ累代を重ねたかを表す表記法があります。
F1はfirst filial generationの略で、本来は雑種第一代目という意味になります。
ですが昆虫や爬虫類の世界では、「自身がどれだけ累代を重ねたか」という意味でも使用されます。
本来であれば品種間交配、系統間交配などをした時点からF1になるのですが、自身で購入したタンジェリン同士を交配してその子供に累代表記としてFを付ける事があります。
累代表記をする場合は(F1)のように、()内にFと累代数を表記します。
4.2 近交系数について
いわゆる「血の濃さ」は近交系数というもので数値化する事ができます。
累代表記と被ってしまうのですが、一般的に近交系数もFが使用されます。
多くの種で近交系数F=0.25から近交弱勢が見られ、F=0.75では産まれた子供の生存率は10%にまで下がります。
一度の近親交配、つまり掛け戻し(親子の交配)又は同胞交配(兄妹の交配)で近交系数はF=0.25に達します。
遺伝的な固定化のために近親交配は有益ですが、誰もこの様な事に気を配らなければいつかその品種や系統は絶滅してしまいます。
出来れば近交系数は0.13(13%)に抑える事が望ましいですが、近親交配自体を咎めている意図はありません。
重要なのは近交系数をきちんと計算して販売時に表記する事です。
近交系数はInbreeding Coefficient Calculator – BullyPedigrees.comの様なサイトで計算することが出来ます。
4.3 ハイイエロー/Xanthic
昨今ではノーマルとも表記される事がありますが、ワイルドの体色に比べてより黄色の強い個体・集団をハイイエローと表記します。
ヒョウモントカゲモドキではハイイエローという表記が一般的ですが、いわゆるザンティック(Xanthic)に該当すると思われます。
例1.
Breed: High Yellow
例2.品種: ハイイエロー
例3.Breed: High Yellow(F1, F=0.125)
また、稀にハイパーザンティックという表記を見ますが、ハイイエローの選抜交配されたグループでしょう。
4.4 タンジェリン/Tangerine
オレンジ色の強い個体・集団をタンジェリンと表記します。
数多いるオレンジ色の個体の全てをタンジェリンという一つの品種にまとめて良いのか悩みました。
ですが「現在流通している殆どのタンジェリンが元を辿れば同じ作出者の個体たちに辿り着くであろう」という情報を教えて頂き、タンジェリンという一つの品種にまとめる根拠となりました。
また別系統のタンジェリン同士の交配をしても殆どの場合、「系統の特徴は薄れるとしてもタンジェリンと言えないくらい色が飛ぶ事は殆ど無い」との経験談も複数の方から教えて頂きました。
この事からも基本的なオレンジ色を発色する多因子は同一のものが多いと考えられます。
ただし「先祖返りなのか、極端にノーマルに近い表現が生まれる」場合もあるそうです。
ですがこれは似た表現の別品種ではなく、恐らく遺伝変異だと考えられるとの事です。
もしも多くのタンジェリンと交配して、ほぼ100%子供の表現がタンジェリンと言えないような個体がいた場合は、現在流通しているタンジェリンとは違う遺伝子を持つ可能性はあります。
雄親が同じで雌親の違う2匹の子と、そのうちの一匹と同クラッチ同ハッチの個体を見せて頂きました。
餌の頻度などでかなり体格や表現が異なる為、最終的に育ちきった見た目は似通る可能性はありつつも成長過程ではノーマル、ハイイエロー、タンジェリンなどの同定は難しい場合があるようです。
この様なケースもあるため血統図のような出自が解るデータが大事だと、あくまでも個人的には感じました。
4.4.1 系統表記なし同士の交配
この様な理由から、例えば系統(ライン)表記のないタンジェリン同士の交配、系統表記があっても別系統同士を交配する場合は「タンジェリン」と表記するのが妥当と思われます。
例1.
Breed: Tangerine
例2.品種: タンジェリン
例3.Breed: Tangerine(F1, F=0.125)
4.4.2 別系統同士、又は別系統と系統表記なしの交配
但し別系統同士を交配する場合、子孫は以下のように表記するのが望ましいと思われます。
例1.
品種: タンジェリン(系統A X 系統B, F1, F=0.125)
詳しくは品種と系統の定義を参照して下さい。
Xは以下の植物の交配記法を参考にしております。
未登録の交配種の場合、交配のサインである乗法記号 X 印を両親の学名(個体名がある場合には第三項目として表示)の間に付けて表します。
属名、種名などの表示方法とラベルの書き方 http://www.nihongo.com/matsuura/cattleya/label.htm
系統表記のあるタンジェリンと表記なしタンジェリンの場合は
例2.
品種: タンジェリン(アウトクロス・系統名A, F1, F=0.125)
の様な表記が望ましいと思われます。
4.4.3 パーセント表記について
たまに見る表記法でTangerine 50% Line Nameのような表記になります。
これは各系統の特徴的な幾つかの遺伝子がそれぞれ劣性で且つホモ接合体であるという仮定の上で、「ホモ接合体の場合、交配時には対立遺伝子が一つは遺伝される」という法則から記載されているようです(よって雑種F1は50% / 繁殖によるヒョウモントカゲモドキの遺伝を理解するための遺伝学の初歩を参照)。
但しこの表記法はあくまでも理論上の話であり、特に2世代目以降の表記は不確かなものとなります。
100%に近しい程に戻し交配を行った場合でも、「100%になったと思うから%表記を外そう」などは有り得ない暴挙といえます。
ですが残念ながら、この様な表記が過去にあったそうです。
この表記法はかなり厳密に行わないと詐欺が横行する原因となりますが、メリットがあまりない上にデメリットが非常に大きいです。
よって本稿ではパーセント表記は使用しないという結論にさせていただきます。
4.5 その他の品種
他にもメラニスティック(黒化)やハイポメラニスティック(黒色素の減少)などの品種が存在します。
これらも表記方法は上述の通りとなります。
4.6 品種+モルフ
品種とモルフを組み合わせたタイプもあります。
タンジェリントレンパーアルビノなどが該当します。
このような組み合わせの場合モルフなのか品種なのか分類が悩ましいです。
ですが品種の特徴が消えれば1つモルフになるので、今回は品種に分類させて頂きました。
例1.
Breed: Tangerine Tremper Albino
例2.品種: タンジェリントレンパーアルビノ
例3.Breed: Tangerine Tremper Albino(F1, F=0.125)
5. ライン/Line Breeding
日本ではLineとStrainは一括りに系統とされますが、海外ではLineとStrainを区別しています。
畜産やペットでは主にLineを使用し、本稿でもライン(Line)を使用します。
Strainとの違いは品種と系統の定義を参照して下さい。
系統(Line)とは品種の中でも、更に区別できる特徴が遺伝的に固定化されている繁殖集団であり、尚且Lineでライン構築開始時の個体まで辿れる事が定義になります。
- 遺伝的に固定化されているとは、他と区別出来る特徴が確実に次世代に遺伝される事を指します
- Lineで辿れるとは、共通祖先までのさかのぼる事が出来る血統図や血統書の有無となります
5.1 定義と現状
前節でも触れましたが、畜産でのLine Breedingの定義としては以下の項目があります。
- 品種内で他と区別できる有益な特徴がある
- 特徴が次世代に確実に遺伝される
- ライン構築開始時の個体まで遡る事が出来る
- 家畜の場合一応の尺度として平均近交係数10~13%、血縁係数20~25%を有するものと考えられている(新家畜育種学 P.107)
ですがライン表記されている物の殆どがこの定義を満たしているとは言えないのが現状です。
ラインの構築方法を公開している人は少ないのでどの様に管理されているのか不明ですが、購入個体に関して「ライン構築開始時の先祖まで辿れる」事が出来るものは殆どありません。
なぜこれらの定義が重要なのか、更に詳細な定義や現状の問題点については品種と系統の定義を参照してください。
5.1.1 実際に流通しているライン
実際に流通している複数のラインについて、数名の方から作出元へ問い合わせた内容とその返答を教えて頂きました。
その結果複数のラインにおいて、産まれた個体のクオリティによってライン名を付けるか決めているという返答が得られたそうです。
つまりそれらのラインにおいては、前述した「次世代に確実に遺伝される(特徴の遺伝的な固定化)」という定義を満たしていないことになります。
5.2節で詳しく述べますがこの様な事情は、ラインをペアで揃えてもその子供にライン名を使わない方が良いと考えられる一つの根拠となります。
5.2 同一系統ペアの交配の表記について
同一系統の個体をペアで揃えて交配した場合でも、系統名をそのまま使用するのは避けたほうが良いと考えられます。
これはLineの定義である以下の項目の1つ、または複数が必ずしも保証されない事が理由です。
- 他の個体と区別できる特徴の基準
- 他の個体と区別できる特徴が次世代に確実に遺伝される
- ライン構築開始時の個体まで遡れる
- 平均近交係数10~13%、血縁係数20~25%を有する
これらが不明・保証されない事が、他者のライン名を使用しない方が良い理由となります。
この結論は「ライン名を使用しない」という方針から始まっているのではなく、調べた結果「使わないほうがよい」と考えるに至った事を明記しておきます。
5.2.1 遺伝的な固定化について
1. 他の個体と区別できる特徴の基準
と2. 他の個体と区別できる特徴が次世代に確実に遺伝される
については、現在ライン名が表記されて販売されているものがいわゆる一点物の子供であるのか、それとも確実に遺伝されることが確認されているのか不明な場合があるからです。
遺伝の固定化がされていない繁殖集団とその子孫は本来はラインとは呼べません。
また前節に記載しましたが、遺伝的な固定化がされていないにも関わらずラインと表記されているものも実際にあるようです。
「畜産と違うホビーなのだからそれで良いではないか」という方もいると思われますが、そうだとしてもライン名を付ける付けないの基準が不明なので作出者以外はライン名をそのまま付けるべきではないでしょう。
5.2.2 血縁関係について
3. ライン構築開始時の個体まで遡れる
にいては単なる決まりではなく、購入個体でどのように交配をしてくのか?という計画に深く関わります。
例えばペアで揃えた個体はラインなので品種よりは近縁関係にある事は自明です。
ですがそれが兄妹なのか異母兄妹なのか異父兄妹なのか、そういった情報は解らない事が多いです。
これが解らないと意図せず近交弱勢が発現してしまう可能性があるため、系統の保持が非常に困難という事になります。
ラインの構築やライン交配法についてはラインの保持と構築方法を参照して下さい。
4. 平均近交係数10~13%、血縁係数20~25%を有する
は個体の健康に関わるものになります。
本来であれば同胞交配(兄妹での交配)は一度で近交系数F=0.25に達してしまうため、ライン交配ではこれを避けるようにします。
ですが購入個体の過去を追うことが出来ない為、購入したペアが兄妹の可能性があります。
両親の血縁関係が不明な場合が殆どなので、ちゃんとした近交系数の計算は不可能ですが異母(異父)兄妹、兄妹での交配である事を考えると近交系数F=0.125~0.25と記載するのが良いかもしれません。
これは一応ラインなのだから、育種家の手元で近視交配がされた個体が売りにだされてはいないであろう、という前提に基づいております。
実際に合って購入出来る育種家の場合は、直接購入個体の種親の血縁関係について尋ねると良いでしょう。
実際のライン交配の方法についてはラインの保持と構築方法を参照して下さい。
近交系数はInbreeding Coefficient Calculator – BullyPedigrees.comの様なサイトで計算することが出来ます。
5.2.3 実際の表記
これまで述べてきた事を踏まえると、以下の様な表記が望ましいと考えられます。
例1. Line: Tangerine(Line A X Line A, F1, poss F=0.125~0.25)
例2. Line: Tangerine Line A X Tangerine Line A(F1, F=0.125~0.25)
例3. ライン: タンジェリン(ライン名A X ライン名A, F1, poss F=0.125~0.25)
例4. ライン: タンジェリンライン名A X タンジェリンライン名A(F1, F=0.125~0.25)
poss F=0.125~0.25
この部分に関してはposs F≒0.25
の様な表記なども考えられます。
5.3 アウトクロスした個体について
アウトクロスして産まれた子供に対して、又はその子供の血筋に関しては元の系統名をそのまま使う事は自分の知る限りふさわしい場合がありません。
アウトクロスした個体の近交系数はF=0.0になりますし、(全て潜性だと仮定すると)遺伝子もヘテロ接合体ですので表現型として確認出来ません。
例えば系統名のあるタンジェリンと、系統名の無いタンジェリンを交配した場合は以下の様な記載が望ましいです。
例1. Breed: Tangerine(Outcross Line Name A)
例2. 品種: タンジェリン(アウトクロス ライン名A)
系統間交配(別系統のタンジェリンとの交配)は以下のような記載が望ましいです。
この際、交配の表記は雌 X 雄となります。
例1. Breed: Tangerine(Line Name A X Line Name B)
例2. 品種: タンジェリン(ライン名A X ライン名B)
また、タンジェリンとタンジェリンではない個体を交配するケースもあります。
W&Yなどをタンジェリンに加えたい場合です。
この様なケースは産まれた子をタンジェリンと表記して良いのか疑問が残ります。
もしも見た目が殆どタンジェリンとわからなく、W&Yの表現も微妙であれば、以下のような記載が望ましいと考えられます。
以下の例では品種などの表記を敢えてしておりません。
例1. Tangerine X W&Y
例2. タンジェリン X ホワイトアンドイエロー
見た目が殆どタンジェリンとわからなくW&Yの表現は明らかなのであれば、以下のような表記が望ましいと考えられます。
例1. Morph: W&Y(Outcross Tangerine)
例2. Morph: ホワイトアンドイエロー(アウトクロス タンジェリン)
見た目でタンジェリンとわかりW&Yの表現も明らかなのであれば、以下のような表記が望ましいと考えられます。
これはタンジェリンの多因子の顕性であろう遺伝子が遺伝したのか、W&Yがタンジェリンの潜性の遺伝子をヘテロで持っていた、又はその両方の可能性がある為です。
例1. Breed: Tangerine W&Y(F1)
例2. 品種: タンジェリン ホワイトアンドイエロー(F1)
5.4 新しいラインについて
既に存在する2種類以上のラインの個体を交配させる事で、両方の優秀な遺伝子を持ったラインを構築する事が出来ます。
これは畜産におけるライン交配の目的でもあります(ライン間交配ではない.交配相手がラインの個体である必要は必ずしもない.)。
b. 系統交配(line breeding)
...省略...
系統内での選別による交配では、後述する近親交配に比べて近交度の低い交配となるので、望ましい遺伝子を急速に固定することはむずかしいが、他方、不良遺伝子が急速にホモ化する危険性も少なくなる。
この交配法のねらいは、血縁的に近縁関係にある優秀な個体を、徐々に繁殖圏内に取り入れてゆき、すぐれた能力をもった繁殖集団を維持していこうとするものである。
育種過程において、急速に近交度を高める必要のない場合、また、強度の近交によって不良遺伝子が急速にホモ化するおそれのある場合などに採用される。新家畜育種学 P.107
Blood Emerine(Blood X Emerine)やClown G(G Projects X Electrics)などがこれにあたります。
ただしヒョウモントカゲモドキのラインに関しては定義が非常にあやふやな為、新しいラインの構築は非常に慎重になるべきです。
この是非については品種と系統の定義の6. 新しいライン構築の是非についてを参照して下さい。
6. サブライン
サブライン(Subline)とは、あるラインを作出元以外の育種家が増やした際に使われる表記になります。
以下のサイトの説明が非常にわかりやすかったです。
わずかな領域でもゲノムがまだ固定していない近交系が、分岐した場合どんなことがおこるでしょう?
...(省略)...
ゲノムの固定されていない領域が、2つの場所で、それぞれ別個に固定されることが予想されますし、実際そうなります。
そうなると、同じ近交系Aでも、X研究所の近交系Aと、Y研究所の近交系Aは、ゲノムレベルで異なることになります。...(省略)...
そうすると、X研究所の近交系Aは、A/Xj とあらわすことができ、Y研究所の方は、A/Yj となります。
A/Xj と A/Yj、区別できましたね。どぶねずみ王国: 亜系統 (substrain), http://takashikuramoto.blogspot.com/2013/10/substrain.html
より詳しくは品種と系統の定義の5. サブライン(Subline)の定義を参照して下さい。
これはつまりラインの定義を満たしている販売個体を購入し、近親交配ではなくライン交配を行える場合に適用されます。
作出者以外がラインをちゃんとライン交配によって増やす場合はサブラインとなります。
これは販売個体が作出者ではなく他者が増やした物であるという区別が付く事になりますし、作出者とは別のSubであるという事も解る良い表記法に思えます。
ただし、既存のラインはラインの定義を満たしていない事が多々あり、且つライン名を付ける・付けないの基準が不明なので、既存のラインでサブライン表記法を使用するのは難しいでしょう。
今後ラインの定義を満たした個体たちが流通した際には使用する事が考えられます。
またラインの定義とは別にコードの重複問題もあります。
品種と系統の定義でも述べているのですが、この表記法には重複しないコードが必須となります(上記引用でいうXj, Yj)。
現在育種家のコードを管理する組織などはないので、この辺りは今後の課題と言えそうです。
動物取扱業の登録番号は国内でしか通用しませんし、県をまたぐ引っ越しなどで業を取り直したら登録番号が変わりそうです。
また、何よりも流石に長過ぎるので適切ではないと考えられます。
これらの理由から、現在はまだサブライン表記を使用する下地が整っていない、と判断し本稿では表記例を記載しない事にしました。
7. プロジェクト
プロジェクト(Project)とは遺伝的な固定化を目指している繁殖集団を指すようです。
育種学等ではプロジェクト(Project)という用語は確認出来ませんでしたがエキゾチックアニマル、特にヒョウモントカゲモドキの育種において使用される用語のようです。
5. 系統/Line Breedingで述べたラインの定義を満たす為のプロジェクトである、という使い方がされいると思われます。
ただし単に「ラインを目指している」という定義だけでは、プロジェクトという表記が無数に増えて不適切な状態になるのは目に見えています。
つまり幾つかの明確な定義が必要になります。
これを筆者自身が考える事も可能ですが、本稿では(今の所)それは行いません。
折角ここまで育種学や実験動物学など既存の学問の知見を、エキゾチックアニマルの世界に持ち込もうとした試みが崩れてしまう事になるからです:(
筆者の勉強が足りないだけで、似たような意味合いの用語や定義がないかこれからも調べていく予定です。
よって、Lineを目指している様な繁殖グループについての表記は現段階では不明とさせていただきます。
8. ペットクォリティ
ペットクォリティ(Pet Quality)は繁殖に用いて欲しくない個体に対して使用されます。
例えば隠れヘテロの検証を行った際に産まれた個体などに表記されます。
繁殖に使用するには不適切なモルフの組み合わせ(複数のアルビノの遺伝子を持つなど)ですが、ペットとして飼育するには問題が無い事からペットクォリティという呼称が生まれたと思われます。
表記は単純にペットクォリティとだけ記載します。
繁殖に用いて欲しくないので、これまでとは逆に両親の情報や品種名、モルフ名等々は記載してはいけません。
例1. Pet Quality
例2. ペットクォリティ
9. 品種の累代表記や新しいラインの表記
これから新しいラインを構築出来る幸運に恵まれた場合、ライン名は機械的な名前にすべきと考えます。
名前とは人間に大きな先入観を与えるものです。
例えばヒョウモントカゲモドキの(Mack|GEM)スノーというモルフ名は前提知識がなければ、「体色が白くなる(白化/リューシスティック)」と思う人が殆どではないでしょうか?
ですが実際には黒色の色素は残る為、恐らくはアザンティック(Axanthic/黄色素の消失)の一種だと思われます。
この様な誤解を防ぐために適切な名前を付ける必要があるのですが、「適切である」事を数値化するのは非常に困難です。
よって機械的に名前を付けるのが無難だと考えられます。
実験動物の分野では国際的な命名規則が存在し、また名前の管理もされています。
よって系統名の重複を避けるなどが出来ます。
ですがエキゾチックアニマルの世界では、現時点ではこの様な機械的な表記規則の採用は難しいと考えられます。
なぜならば系統名の管理をする組織が無いため、機械的な表記の重複を避けることが出来ない為です。
恐らくシンプルな表記をすれば、コードの重複によって大きな混乱が生まれると思われます。
よって(厳密なラインの定義を満たすのであれば)好きな名前を付けるしかないと言えます。
但し、前述の様に人間に先入観を与えるような名前は避けるべきでしょう。
9.1 機械的な表記法の代案
実験動物では国際的な命名規則が存在する事は前述の通りです。
また管理組織がないために、エキゾチックアニマルではこの様な表記法が難しい事も述べました。
ではそれを放置するのかというと、そうではありません。
名前を見てすぐに解らないというデメリットは依然として存在しますが、血統図があれば現状の「何が何だか解らない」という問題は解消されます。
自分の購入(又は譲渡)された個体を最初の祖先とし、血統図を作成していく。
そして販売時に血統図を添付する。
更に自分で交配する際は、その血統図が含まれた血統図にして自分でも血統図を作成していく。
この様にしていく事で名前だけでは解らないけれでも、必要な情報は取得出来る状態にしていく事ができます。
10. 血統図の問題
血統図や血統書に関しても、犬猫やサラブレッドと違いエキゾチックアニマルでは発行する団体が現時点ではありません。
よって簡単に偽造する事が可能です。
大変残念な事ですが本稿で述べてきた事が多くの方に受け入れられた場合、血統図の偽造などが問題になる事が考えられます。
血統書の発行団体などがない場合、この問題は根本的な解決が出来ません。
よって信頼できる育種家やショップを探すという、本来は消費者が負うべきではないコストが発生します。
それでも現時点の状況よりは好転したと言えるると考え、本稿を公開しております。
11. ヘテロ検証
ヒョウモントカゲモドキに限らず、複数のモルフが存在する種では隠れヘテロという問題が生じる事があります。
ある個体がどの既存モルフを持っているのかを、交配によって確認していく事を検証と呼びます。
多くの場合は潜性のヘテロ検証を行うのでヘテロ検証と呼ばれますが、似ている表現の互換性のある遺伝子がどちらなのか?を確認する事もあります(マックスノーとGEMスノーなど)。
11.1 隠れヘテロとは
隠れヘテロとは表記されていない遺伝子を目に見えない形(ヘテロ接合体)で個体が持っている事を指します。
隠れヘテロは多くの場合で潜性(劣性)のモルフで起こりますが、顕性や不完全顕性でも確認されています。
ヒョウモントカゲモドキでは特にマックスノーが有名です。
11.2 隠れヘテロの問題
例えば表記にアルビノについて書かれていない個体同士を交配した場合に、子にアルビノ表現が現れたとします(そしてこれはさほど珍しい事ではありません)。
このアルビノが全く新しいアルビノの可能性もありますが、多くの場合は既存の3種類のアルビノの何れかの可能性が高いです。
ではこのアルビノは3種のどのアルビノなのでしょうか?
トレンパー、ベル、レインウォーターそれぞれのアルビノについて「こういった特徴がある」と説明される事がありますが、それらはあくまでも傾向と考えたほうが良いです。
見た目だけで出自不明のアルビノがどのアルビノなのかを判断する事は実質出来ない、してはいけない行為と言えると考えられています。
ではこのアルビノが何なのか?を知るには、それぞれのモルフと交配して子が100%アルビノ表現が表れるかを確認しなければいけません。
この子が例えばトレンパーアルビノだった場合、検証のためにベルアルビノとトレンパーアルビノ両方のヘテロを持つ個体、レインウォーターとトレンパーアルビノの両方のヘテロを持つ個体が生まれます(この様な個体はペットクオリティとして販売されます)。
こういった検証をするにはまず最初に生まれた出自不明アルビノの子供を性成熟まで1年半~2年ほど育て、各種アルビノと交配し、卵を孵化させなければいけません。
つまり検証には2年以上の歳月が必要となります。
他にも目の変異に関するエクリプス以外のモルフを扱う場合、エクリプスは同じく目の変異に関するモルフなのでエクリプスが含まれない個体と交配させたい場合が多いと思われます。
ですが現在流通している個体にはヘテロ接合体エクリプスが含まれている事が少なくないです。
11.3 隠れヘテロの検証をしていない場合の表記
隠れヘテロの検証をしていない場合は、これまで述べてきたWCBとペットクォリティ以外の表記にプラスしてヘテロ未検証などの表記を追加するのが望ましいです。
例1. 品種: タンジェリン(F1, F=0.0)[ヘテロ未検証]
例2. モルフ: RAPTOR(F1, F=0.0)[ヘテロ未検証]
これまで述べてきたモルフや品種、系統の表記にヘテロ検証済みなどの表記が無い場合はヘテロ未検証と考えて下さい。
ですが一部の育種家の方はヘテロの検証をちゃんと行っている場合もありますので、これは本稿の表記規則上ではという但し書きが付きます。
11.4 隠れヘテロの検証結果の記載
隠れヘテロの検証を行っている場合は、販売時にどの様な検証を行ったのか記載した用紙を添付するのが望ましいです。
どの様な検証を行ったのかとは、両親の検証相手のインヴォイスや画像、検証の結果生まれた子供の写真などです。
検証相手の情報と子供の写真、更に言えば交配時の写真なども記載するとより信頼性が高まると考えられます。
現時点ではどんな情報を載せるべきか、育種家の中で共有されている必須項目などは無いと思われます。
この点に関しては今後整理されていくと思われますので、自分自身でどんな情報を記載すれば良いか試行錯誤する必要があります。
レビューをお願いした方に「無い」と書くのは難しいので「出たものを書く」のが良いのでは?という意見を頂きました。
1/4の確率でホモ接合する場合、3/4を16連続で引き続ける可能性もあります。
よって、「この遺伝子が入っていない」ではなく「こういう検証の結果、これが出た」と記載するのは良い手法の一つです。
この用紙を偽造する事は可能ですので10. 血統図の問題と同様に消費者が負うべきではない、信頼できるショップや育種家を探すというコストが発生します。
これも同様に現時点より悪くなるのではなく、少しでも好転すると考えて本稿を公開しております。
11.5 ヘテロ検証済みの表記
隠れヘテロの検証を行った繁殖集団においては、上記の検証結果の用紙を添付しているのであればヘテロ検証済などの表記を追加する事が望ましいと考えます。
この表記に関しては海外ではPureと表記されるか、またはラベルには表記せずに未検証の個体は全てペットクオリティとして検証済み個体しか売らない場合があります。
検証済み個体以外は全てペットクオリティにすべきかという問題は、個人的にはそういう世界になればいいなと思います。
ですが全ての育種家がいきなり100%こういった方針を取れるかというと、中々難しいとも考えます。
よって、まずはヘテロ未検証と明記すること、検証している個体については用紙とヘテロ検証済みと明記する事から始めるのが良いと思われます。
例1. トレンパーアルビノ[ヘテロ検証済]
ヘテロ検証済という言葉は、意味が通じれば他の言葉でも問題ないと考えられます。