GeckoBoa L867 - Fascio Female Photo By iori@geckoholic 2018-02-10
ワイルドコートブラッドライン(Wild Caught Bloodline 以下WCB)とは、採集された野生のヒョウモントカゲモドキの純粋な子孫(血統)の事です。
日本語では野生採集血統となります。
WC(Wild Caught)は野生採集個体そのものですが、野生採集個体同士を繁殖させたF1以降がWCBとなります。
ブラッドライン(Bloodline)は「血統」という意味の一つの単語ですので、タンジェリンのブラッドとは関係がありません。
WCBについて
20年前は市場で販売されるヒョウモントカゲモドキの殆どが野生採集個体だったそうです。
ですが現在では原産国の政情不安定や野生動物の輸出規制により、市場でWCを見ることが出来る可能性は0に近しいです。
ただし後述するスティーブ・サイクスのように原産地で捕獲されヨーロッパで繁殖した個体のF1(とそれ以降の子孫)の輸入や、野生採集個体が販売されていた頃からその血統を保持していたブリーダーの繁殖個体がWCBとして販売されています。
WCBの血統維持について
現在流通しているWCB以外のヒョウモントカゲモドキと繁殖した場合、生まれた子どもはWCBと表記出来ません。
WCBも亜種が大きく分けて4つありますので、違う亜種同士で繁殖する事も血統の維持の観点からはおすすめ出来ません。
更に同じ亜種でも見た目が大きく異る複数のタイプがあるようです。
WCBの繁殖をする場合は、同亜種同タイプの個体同士での繁殖が血統維持の観点からは重要となります。
WCBの表記について
昨今ではいわゆるハイイエローの事を「ノーマル」と呼ぶ事が多くなりました。
よって上述したノーマルと区別するために、ワイルドコートブラッドライン、ワイルドタイプ、ワイルドと表記される事が多いです。
WCBには数種の亜種があるため、ワイルドを省き亜種名のみが表記される事もあります。
WCBの遺伝的な特徴について
WCBはいわゆる隠れヘテロを持たない事、遺伝的にクリーンである事が保証されます(3つのアルビノ、エクリプス、ジャングル等の遺伝子を1つも持たない)。
これにより近交係数が高く(近親交配により血が濃く)なり過ぎたラインに対して、そのライン以外の特徴的な遺伝子を極力加える事なく、近交係数を下げる(新しい血を入れる)事が出来ます。
近交係数が下がる変わりに元々のラインの血は薄くなり、そのラインの特徴も薄まりますが、近親交配が進むと健康に問題のある個体が生まれるので重要となります。
ただし見た目だけでは本当にWCBなのか判断する事は非常に難しいと言えます。
よって信頼できるブリーダーの個体を直接、又は信頼出来るショップで購入する事をおすすめします。
GECKOS ETCのWCBラインについて
スティーブ・サイクスのWCBのラインは、現在流通している多くのヒョウモントカゲモドキとは異なる血筋とされています。
パキスタンで採集した野生個体をヨーロッパで繁殖した一世代目の子孫(F1)から形成されたラインです。
スティーブは自身のWCBラインの出自を明記し、更に
野生個体を捕獲し輸入することは禁止されましたが、捕獲された個体同士の子どもを輸出入する事は合法です
出典: Wild Caught Bloodline Leopard Geckos For Sale - Eublepharis macularius - Awesome Leopard Geckos!
と断りを入れています。
GeckoBoaのWCBラインについて
Fasciolatusの欄に
他の "fascios"と同様、これはオリジナルのBC Reptilesのラインです。
出典: Eublepharis Species - GeckoBoa Reptiles
とあり、ファスキオラータスに関してはBC Reptiles社由来のラインのようです.
またGeckoBoaではファスキオラータスについては亜種名ではなく、亜種名から取ったニックネームで表記しています。
Fascios(E. m. fasciolatus)
その理由について
私は彼らが純粋な血統であると信じていますが、正確には知る事が出来ません。そのため私は通常、彼らの亜種名ではなく亜種名から取ったニックネームで呼んでいます。
Although I believe they are of pure descent, to what extent, is not exactly known. For that reason I typically call them by their nicknames rather than their binomial scientific name (i.e., Fascio instead of E. m. fasciolatus).
としています。
ファスキオラータス以外のモンタヌス、アフガン等はニックネームになっていない様です。
ヒョウモントカゲモドキの亜種一覧
基亜種はEublepharis macularius maculariusとなります。
呼称については亜種小名を呼ぶ事が一般的です。
E. macularius montanusの場合はモンタヌスと呼ばれる事が多いです。
亜種名 | 呼称 | 原産地 |
---|---|---|
Eublepharis macularius macularius BLYTH 1854 | マキュラリウス | 他亜種の分布していない地域の個体群はmaculariusと扱われる |
Eublepharis macularius montanus BÖRNER 1976 | モンタヌス | パキスタン南東部(?) |
Eublepharis macularius fasciolatus GÜNTHER 1864 | ファスキオラータス | パキスタン南部シンド州ハイデラバード周辺 |
Eublepharis macularius afghanicus BÖRNER 1976 | アフガン,アフガニスク | アフガニスタン東部および南部 |
Eublepharis macularius smithi BÖRNER 1981 | スミシィ | インド北部デリー周辺 |
トカゲモドキ属の種一覧
種名 | 呼称 |
---|---|
Eublepharis hardwickii GRAY, 1827 | ヒガシインドトカゲモドキ |
Eublepharis angramainyu ANDERSON & LEVITON, 1966 | オバケトカゲモドキ |
Eublepharis fuscus BÖRNER, 1974 | ダイオウトカゲモドキ |
Eublepharis macularius (BLYTH, 1854) | ヒョウモントカゲモドキ |
Eublepharis satpuraensis MIRZA, SANAP, RAJU, GAWAI & GHADEKAR, 2014 | サトプラトカゲモドキ |
Eublepharis turcmenicus DAREVSKY, 1977 | トルクメニスタントカゲモドキ |
参考文献 クリーパーNo.77 トカゲモドキ属の分類と自然史(前編) P24, P27-P29
属と種について
亜種とは
亜種とは生物の分類区分において、種の下位区分となります。
地域的に隔絶した離島等で亜種が出現しやすいとされています。
亜種が記載されている種は必ず種小名と同じ学名の亜種が存在ます。
基亜種と呼ばれますが、種記載のタイプ標本(記載の時に基準とされた個体を保存した標本)に該当する亜種のことであり、分化の元となった原種という意味ではありません。
※亜種 - Wikipediaを参照
ヒョウモントカゲモドキではマキュラリウス(Eublepharis macularius macularius)が基亜種となります。
地域的に隔絶した離島等で亜種が出現しやすいと前述しましたが、モンタヌス(E. m. montanus)はまさに「山の」という意味で山岳部に適応した亜種になると考えられます。
亜種同士では交配が可能な場合があります。
属とは
属とは類縁関係が近い種をまとめた分類となります。
種の定義には複数あり、見た目で分けた形態種、相互に交配できない生物同士を分けた生物学的種などです。
ですが多くの場合は形態種で分けられており、属を跨いだ交配が出来ないとは言い切れません。
基本的には別属に分類されるほど形態が異なるのであればまず交配できないと考えて良いです。
交配が成功したとしても、生存率や受胎能力が著しく低下する場合があります。