潜性(劣性)遺伝、顕性(優性)遺伝、共顕性(共優性)遺伝、不完全顕性(優性)遺伝、超顕性(優性)遺伝のまとめとなります。
メンデルの3つの法則の1つである優性の法則では潜性(劣性)遺伝と顕性(優性)遺伝を扱っています。
しかし優性の法則では遺伝子座に対立遺伝子が2つしかない事が前提であり、また対立遺伝子が2つだけの場合でも説明出来ないパターンが知られています。
しかし優性の法則を拡張する事により、他のパターンや対立遺伝子が3つ以上の場合(複対立遺伝子)も説明する事ができます。
下記の説明では以下のルールによって遺伝子の大文字・小文字を使い分けています。
- ノーマルではない遺伝子はA,bと表記します
- 大文字Aはノーマル遺伝子に対して顕性(優性)遺伝,小文字bは潜性(劣性)遺伝の様に使い分けています
- ワイルド/ノーマルな表現の遺伝子はnと表記します
- 小文字nはbに対しては顕性(優性)遺伝しますが、Aに対しては潜性(劣性)遺伝するので小文字nとしています
- A,b,nは全て同一遺伝子座の複対立遺伝子です
顕性(優性)遺伝
形質の表れやすさに優劣がある場合、優劣が優れる遺伝子はヘテロ接合体も表現型が表れる.
- ノーマル遺伝子に対して顕性(優性)のA
組み合わせ | 表現型 |
---|---|
AA | Aの表現型 |
An | Aの表現型 |
nn | ノーマルの表現型 |
Aはnに対して優劣関係が優れるので、ヘテロ接合体でも表現型が表れる(nはAに対して潜性(劣性)).
顕性(優性)遺伝の例
- ヒョウモントカゲモドキのホワイトアンドイエロー等
- ボールパイソンの主な顕性(優性)遺伝モルフのキャリコ等
- セイブシシバナヘビのモルフ一覧のレモンゴースト等
潜性(劣性)遺伝
形質の表れやすさに優劣がある場合、優劣が劣る遺伝子はホモ接合体でしか表現型が表れない.
- ノーマル遺伝子に対して潜性(劣性)のb
組み合わせ | 表現型 |
---|---|
bb | bの表現型 |
bn | ノーマルの表現型 |
nn | ノーマルの表現型 |
bはnに対して優劣関係が劣るので、ホモ接合体でしか表現型が表れない.
潜性(劣性)遺伝の例
- ヒョウモントカゲモドキのトレンパーアルビノ等
- ボールパイソンの主な潜性(劣性)遺伝モルフのT-アルビノ等
- セイブシシバナヘビのモルフ一覧のT-アルビノ等
共顕性(共優性)遺伝
共顕性(共優性)の関係にある2つの遺伝子が揃うと両方のホモ接合体の表現型が表れる。
- A,bは共顕性(共優性)遺伝
- ノーマル遺伝子に対して優性のA
- ノーマル遺伝子に対して潜性(劣性)のb
組み合わせ | 表現型 |
---|---|
Ab | Aとb両方の表現型 |
AA | Aの表現 |
bb | bの表現 |
An | Aの表現 |
bn | ノーマルの表現型 |
nn | ノーマルの表現型 |
Aはnに対して優劣関係が優れるので、ヘテロ接合体でも表現型が表れる(nはAに対して潜性(劣性)).
bはnに対して優劣関係が劣るので、ホモ接合体でしか表現型が表れない.
Aとbは優劣関係が共顕性(共優性)なので、Abの組み合わせで両方の表現型が表れる。
共顕性(共優性)遺伝の例
幾つかのモルフは共顕性(共優性)とされていますが、正しくは不完全顕性(優性)と考えられます。
スーパー体とされる表現がある場合は不完全顕性(優性)でしょう。
また致死遺伝とされる共顕性(共優性)遺伝のモルフもありますがホモ接合体で致死となる=共顕性(共優性)という訳ではないので除外すると、2つの表現型が表れる共顕性(共優性)と確認できる爬虫類の品種はありませんでした。
不完全顕性(優性)遺伝
不完全顕性(優性)の関係にある2つの遺伝子が揃うと両方の形質が不完全な形で表れ中間形質(中間雑種)と呼ばれる。
- Aとbは不完全顕性(優性)
- Aとnは不完全顕性(優性)
- ノーマル遺伝子に対して潜性(劣性)b
組み合わせ | 表現型 |
---|---|
Ab | Aとbの中間形質(中間雑種) |
AA | Aの表現型 |
bb | bの表現型 |
An | Aとノーマルの中間形質(中間雑種) |
bn | ノーマルの表現型 |
nn | ノーマルの表現型 |
Aとbは優劣関係が不完全顕性(優性)なので、Aとbの中間の様な表現型となる(中間形質|中間雑種).
Aとnは優劣関係が不完全顕性(優性)なので、Aとbの中間の様な表現型となる(いわゆる共顕性(共優性)のヘテロ接合体).またAAはAしかないのでAの表現型となる(いわゆる共顕性(共優性)のスーパー体).
bはnに対して優劣関係が劣るので、ホモ接合体でしか表現型が表れない.
不完全顕性(優性)遺伝の例
現在共顕性(共優性)とされているモルフの多くは、正しくは不完全顕性(優性)の場合が多いです。
スーパー体が存在するモルフは不完全顕性(優性)と考えて良いと思われます。
いわゆる共顕性(共優性)のヘテロ接合体として説明されるのは上記の表のAnであり、スーパー体と呼ばれているのはAAとなります。
- ヒョウモントカゲモドキのマックスノー等
- ボールパイソンの主な共顕性(共優性)遺伝モルフのバナナボール等
爬虫類コミュニティでは互換性があるという言葉が使われますが、これはAbの事を指す場合が多いです。
中間形質はボールパイソンの主な潜性(劣性)遺伝モルフのキャンディーノ|タフィーノが確認されています。
また系統違いの同一遺伝子も互換性があると表現する人も稀に居ます。
スーパー体も互換性も爬虫類コミュニティでしか通じないジャーゴンなので、多く誤解が生まれています。
超顕性(優性)
稀な遺伝様式だが、超顕性(優性)の関係にある2つの遺伝子が揃うとそれぞれのホモ接合体を超える表現型が表れる.
- Aとbは超顕性(優性)
- ノーマル遺伝子に対して顕性(優性)A
- ノーマル遺伝子に対して潜性(劣性)b
組み合わせ | 表現型 |
---|---|
Ab | AA,bbを超える表現型 |
AA | Aの表現型 |
bb | bの表現型 |
An | Aの表現型 |
bn | ノーマルの表現型 |
nn | ノーマルの表現型 |
超顕性(優性)遺伝の例
爬虫類のモルフで超顕性(優性)とされているものは確認出来ませんでした。